表題作「青い鳥」は、阿部寛主演で映画化されたそうだが、
収録された全8話、全て良かった。
繋がりの無い、
nuskin8人の中学生を主人公にした、8つのストーリー。
8人が通う8つの中学校に、渡り鳥のように現れるのは、
吃音の非常勤教師、ムラウチ先生。
大人としての村内先生も、とても良いが、
私は、主人公の中学生8人が、好きだ。
ハンカチを手放せない、
culturelle益生菌場面かん黙症の少女も。
自分を制御できずに、蛙を殺し続けてしまった孤独な少年も。
家族で、父親の交通事故の心傷を、乗り越えたバスケ少女も。
聡明ゆえに、正義感を持て余す総務委員も。
女王に逆らえない、リズム音痴のどんくさい少女も。
過労自殺で父親を失なった、名門私立からの転校生も。
ぬるま湯環境を脱出してゆく、私立女子中の問題児も。
そして――親の虐待とネグレクトを乗り越えて、
妻や子と大切な巣を作り、
cellmax 團購守ってゆく22歳の若い工員も。
彼らの生き場所の、なんという過酷さ。
いや、私たちが生きているこの世の、不条理と酷薄さを、
思春期の彼らが、どんな思いで受け取るか。
はみ出させまいと押し付けられる、大人の物差し。
子どもの世界での、容赦ない弱肉強食、いじめ。
その中で彼らは、最後には、自分に正直であろうとする。
そこに村内先生が、
「間に合って、良かった」
と現れる。
もし、村内先生が来なかったら、つまり間に合わなかったら、
若いエネルギーは暴発し、大きな悲劇を招いたことだろう。
村内先生がしたことは、人間としての苦しみを、押しやらないで受け入れること。
現実に対し、逃げないで誠実に向き合うこと。
そして、「あなたは一人じゃない」と、心に寄り添うこと。
この短編集のタイトルが『青い鳥』であることが、示唆に富む。
(表題作の「青い鳥」とは、また意味が異なると思う)
自分に正直に生きるのではなく、
強者になるために、あがかねばならない、
この社会の不幸を思う。