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Posted by スターリンクさがみ運営事務局  at 

2015年09月04日

気を催す気

 しかしその行為こそが過ちの第一歩であった――――

「ほんと、だらしないわねえ。馬車の中でダメージを受ける奴なんて、世界広しと言えどあんたくらいよ」

「あ、今ちょっと話しかけないで下さい……うぷっ」

 この不安定に揺れる車内は、大小様々な品を至近距離で目を配文具批發る僕の平衡感覚をあっという間にかき乱した。せめて一度、馬車を止めてから整理すべきだった……
 自身の計画ミスを噛みしめつつ、作業を中断し未だ遠くを注視している僕をしり目に、同乗者の女は一人空いた分広くなった車内をふんだんに有効活用し、午後のティータイムと言わんばかりに優雅にくつろいでいらっしゃる。

「あの、酔い止め持ってないっすか……」

「ヨイドメ? なにそれわかんない。そこの中にあるかもしれないから自分で探しなさい」

 荷物の中に酔い止めなどあるはずがないとわかりきっていたので、せめてこれ以上ひどくならぬよう現状維持に全力を注ぐ。
 遠くを見つめる僕と相反するように、同乗者の女は足を延ばし、片手に持った本をパラパラを捲っている。

「こんな所で……知りませんよ。酔ってげーげー吐いちゃっても」

「はぁ? お酒飲んでないのに酔う訳ないじゃない」

「ほんと、異世界人って意味わかんない事ばっかいうのねー」

 この同じ意味の言葉を使っているが故の意味の伝わ瑞戈非尼らなさが最高にもどかしい。
 大魔女様は僕の忠告など丸で意に介さず、またパラパラと本を捲っている。
 結構な時間こうしているにも関わらず、一向に吐き配を見せない大魔女様を見ていると、自分が人一倍軟弱すぎるのかと自己嫌悪が襲ってくる。
 そしてそれはおおむね正しいのが、余計にネガティブ思考の泥沼にハマっていく――――

「あ”~~……」

「もう、アタシの視界が届く範囲でそんな復活間際のアンデッドみたいな体制にならないでよ」

「聖水をかけるわよ、聖水を」

「この酔いが治るなら聖水でも文具批發なんでもいいです……」
  

Posted by 〆み  at 15:21Comments(0)周向榮醫生

2015年09月02日

から怒っては


「できるだけ早く、ジョル君を訪問される事をおすすめします」
 言われなくても行くつもりだった。ジョルに説明しなければならない。
「ルシール姫との関係はいかがですか?」
 コリンスは心配してくれる。
 ルシールは別れ際にスケートに誘うくらいだいないのだろう。でも、スケートを口実に呼び寄せて言いたい事があるのかもしれない。
「ちょうど遊びに行く約束をしています。ジョルの後にルシールの所に行ってきます」
「それがいいと思います」
 しかし、それには困った問題があった。
「あの、コリンス。今日の作戦の話をちゃんと覚えている?」
 不意に不思議な事を聞かれてコリンスは立ち止まった。
「もちろんですが?」
「じゃあ、概要をまとめて私に提出して、今日中よ」
 コリンスはメレッサを睨んでいる。
「皇帝に何か言われましたね」
 コリンスは勘が鋭い。なぜわかるのだろう。
「何の話?」
 首を振って、とぼけてみた。
「姫君、ルシール姫とおしゃべりしていたでしょう。それを皇帝に怒られましたね」
 もうだめだ、全部見透かされている。コリンスって、ものすごく頭がいいんだ。
「お願い、私はジョルとルシールの所に行かなきゃならないの」
 ちょうどいい口実になった、概要をコリンスに書かせればいい。
 コリンスは考えている。
「わかりました。しかし、あす、ご自分で概要を書いてください。いいですね」
 私も書くべきだと言うのか、コリンスは最近は部下じゃなくて先生みたいになってきた。
「わかりました」
 メレッサは先生に答えるように素直に答えた。
 自分の宇宙船に戻ると、その足でジョルの宇宙船に向かった。
 ジョルは機嫌よく迎えてくれた。彼の部屋は驚くほど質素で、壁には艦隊の動きが分かるようにいろんな端末が綺麗に配置されていた。立体スクリーンには今も艦隊の動きが表示されている。遊ぶことしか考えていないメレッサの部屋とまるでちがった。  

Posted by 〆み  at 11:12Comments(0)周向榮醫生

2015年08月26日

サラを蹴飛ばそう


『セリー、バカなことはやめなさい』
 サラが怒鳴る。
「セリー、取り返して」
 カレンの声だ。セリーは猛然とサラに向かうと彼女の手から戦車を奪い取った。
『セリー、あなたどうかしてるわ!』
『してないわ、カレ柏傲灣呎價
ンの方が正しい。それだけよ』
 今度はサラが向かってきた。
 アンドロイドの腕力は人間の数百倍ある、運動能力も桁違いに大きい。
 セリーは向かってきたサラを壁に向かって投げ飛ばした。サラは素早く宙返りをし壁の桟木を蹴るとセリーに体当たりする。セリーは跳ね飛ばされて窓にぶつかりそうになったが、うまく窓の枠に足ををかけて受け止めた。
 喧嘩にはなったが部屋を壊すわけにはいかない。アンドロイドが本気で戦ったらこんな部屋などバラバラに壊れてしまう。お互いに部屋の調度品を壊さないように注意しての戦いだ。
 セリーがサラを天井に向けて蹴飛ばす。サラが天井に足をあてて柔らかく受け止めそのまま真下にいるセリーに向かってくる。
「すげー」
 軽業のように部屋中を飛び回るサラとセリーを二人の子供がビックリしてみている。
 サラはセリーが手に持っている戦車を取ろうとするが、体重が軽く作
られているセリーの方が有利だ。
 二人は部屋を壊さないように注意して戦っていたが、壁や天井にぶつかるたびにものすごい音がしていた。
 何事が起きたかと奥様が駆け込んできた。
「やめなさい!! 何してるんです!!」
 奥様に怒鳴られて二人はやっと我に帰った。ちょうどセリーがとしている所だった。
「カレンがおもちゃを取ったんです」
 サラが叫ぶ。
「ちがいます、セロルドが取ったんです」
 セリーも叫んだ。もう、絶対に負けられない。
「どうしたというのです!」
 奥様が叫ぶ。
「戦車はセロルドのおもちゃです」
「ちがいます。カレンが先に開けた箱に入っていたからカレンのです」
 セリーも負けていない。
「おもちゃの取り合いなの?」
 奥様は驚いている。ふと、床に落ちて數學暑期班いるお人形を見つけた。
「これがカレンのおもちゃでしょ」  

Posted by 〆み  at 11:18Comments(0)周向榮醫生

2015年07月08日

悩みは自分の中


 松下は驚いたように目を丸くした。
「そうですね、そういえばよく話をしていますね」
 お互いなんとなく笑った。門脇は自分と松下は似ているんじゃないかと、そう思った。
「僕は今まで他人に自分の話をしたことがありませんでした」
 きっと松下も、で解決していくタイプなのだろう。悩みの答えは、結局自分の内からしか生まれないということをよくわかっているに違いなかった。
「先生は俺のどこを好きだったんですか」
 拍子抜けした顔は、すぐさまカーッと赤くなった。
「どうして俺だったのか、一度聞いてみたいと思ってたんです。俺にはそういうのが、よくわからなくて…」
 赤い顔はすぐにその色が褪め、悲しそうな表情になった。けれどそ暑期數學班
れもほんの少しの間だけ。次の瞬間にはいつもの、感情の読めない、平坦な松下の顔に戻っていた。
「気になって仕方がなかったからでしょうか。僕にもそれ以上のものはわかりません」
 話を振ったあとになって、自分が調子に乗って聞かなくていいことまで聞いてしまったことに気づいた。何か別の話題を、そう考えて頭に浮んだのはなぜか三笠の顔だった。
「俺にはとても仲のいい、親友と呼べる男が二人いるんですが、そのうちの一人が高校の時に自分がゲイだと俺に告白しました」
「勇気がある人ですね」
 悩んだんだけどさ…そう言いながら、三笠は割合とあっさりと告白した。三笠のことを話題にしたが、それから先に話をどう展開しようなど門脇は考えていなかった。
「君は告白した親友のことを、その時どう思ったのですか」
「…驚きました。けど同性愛者だからと言って、それ以後に親友が変わるわけではなかったので、それはそれで納得できました」
 松下は小さく息をついた。
「そうですか。それならよかった。僕もどちらかと聞かれれば、間違いなくそういう嗜好を持つ人間でしょうから」
「そういうのは、昔からわかっているものなんですか」
「ほかの人がどうかはわかりませんが、僕が気づいたのは大学生の頃でした。遅いのかもしれません」
 門脇の正面、松下の背後にある時計が、ちょうど十二時を指した。  

Posted by 〆み  at 11:45Comments(0)周向榮醫生